「SaaS営業って最近よく聞くけど、自分にもできるのかな」「年収は上がるの? きついって噂も気になる」
SaaS営業(SaaS Sales)とは、Software as a Service(クラウド型ソフトウェアサービス)を法人顧客に提案・販売する専門職です。従来の営業と大きく違うのは、1回売って終わりではなく、顧客がサービスを使い続けて成果を出すまでを支援するところにあります。インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスという3つの専門職に分かれていて、チームで顧客の成功を追いかけます。経済産業省の調査ではIT人材が2030年に最大79万人不足すると見込まれており(経済産業省「IT人材需給に関する調査」)、SaaS営業の求人ニーズは今後も伸び続ける見通しです。
法人営業の経験があるあなたなら、SaaS業界で活かせるスキルがすでにあります。ここでは、SaaS営業の仕事の中身から年収、きつい現実、未経験からの転職準備まで、正直にお伝えします。
SaaS営業の仕事内容と分業体制
SaaS営業とは何か
SaaS営業を一言で言うと、クラウド型のソフトウェアサービスを法人に提案して導入してもらい、使い続けてもらう仕事です。
ふつうの営業だと「契約を取る」ことがゴールですよね。SaaS営業はそこが違います。SaaSはサブスクリプション(月額・年額課金)で収益を得るビジネスモデルなので、顧客が解約してしまえば売上は消えます。だから「売ったあと」がむしろ本番なんです。契約後に顧客がきちんとサービスを活用し、成果を出してもらうまでが仕事の範囲になります。
この構造があるから、SaaS営業ではLTV(顧客生涯価値)やチャーンレート(解約率)といった指標を日常的に追いかけます。聞き慣れない言葉かもしれませんが、転職後にすぐ覚えられるので心配しなくて大丈夫です。
インサイドセールスの役割
インサイドセールス(IS)は、見込み顧客への最初のアプローチを担当します。電話やメール、オンラインミーティングを通じて顧客の課題をヒアリングし、商談につながりそうかどうかを見極める仕事です。
SaaS企業の多くは「The Model」と呼ばれる分業体制を採用しています。インサイドセールスはマーケティング部門から渡されたリード(見込み客リスト)に対してアプローチする流れです。「飛び込み営業」はほとんどなく、データを使って効率よく見込み客を育てていくスタイルが主流になっています。
未経験からSaaS業界に入るなら、インサイドセールスが最も入りやすいポジションです。営業の基本動作を学びながらSaaS業界の商習慣やプロダクト知識を身につけられるので、ここからキャリアをスタートする人はたくさんいます。
フィールドセールスの役割
フィールドセールス(FS)は、インサイドセールスが育てた見込み顧客に対して商談からクロージング(受注)までを担当します。オンライン商談が中心ですが、大型案件では対面のプレゼンテーションも行います。
フィールドセールスに求められるのは、顧客の経営課題を深く理解し、自社のSaaSプロダクトでどう解決できるかを提案する力です。機能を並べて説明するだけでは足りません。導入後にどんな成果が出るか、具体的な数字で示す必要があります。
法人営業の経験が最も直結するのがこのポジション。商談の組み立て方や社内稟議の通し方を知っている人は、SaaS業界でもすぐに力を発揮できます。プレゼンテーションスキルを磨いておくと、商談の成約率がぐっと上がりますよ。
カスタマーサクセスの役割
カスタマーサクセス(CS)は、契約後の顧客をフォローしてサービスの活用を促進する仕事です。導入支援、活用トレーニング、定期的なレビューミーティングを通じて、顧客がサービスから最大限の価値を引き出せるよう伴走します。
SaaS営業が「売ったあとが本番」と言われる理由は、まさにこの職種にあります。顧客の解約を防ぎ、契約のアップグレードやオプション追加(アップセル・クロスセル)につなげることで売上を積み上げていく。地道だけど、やりがいのある仕事です。
「営業はやりたいけど、新規開拓のプレッシャーはもう疲れた」という人には、カスタマーサクセスが合うかもしれません。詳しくはSaaS業界のカスタマーサクセスへの転職ガイドもあわせて読んでみてください。
SaaS営業の年収はどのくらい?
職種別の年収目安
SaaS営業の年収は、職種と経験年数で幅があります。大手転職サイトの求人データから見える目安をまとめました。
| 職種 | 経験1-2年目 | 経験3-5年目 | 5年目以降 |
|---|---|---|---|
| インサイドセールス | 350万〜500万円 | 500万〜650万円 | 650万〜800万円 |
| フィールドセールス | 450万〜600万円 | 600万〜800万円 | 800万〜1,200万円 |
| カスタマーサクセス | 400万〜550万円 | 550万〜700万円 | 700万〜1,000万円 |
参考: doda・マイナビ転職・リクルートエージェント等の2025〜2026年SaaS営業求人データより目安を算出
これに加えてインセンティブ(成果報酬)が年収の20〜30%ほどつく企業も多いです。フィールドセールスのトップ層だと年収1,000万円を超える人も珍しくありません。年収1,000万円を狙う転職方法もあわせてチェックしてみてください。
厚生労働省のjobtag(厚生労働省 職業情報提供サイト)によると、営業職全体の平均年収は約579万円。SaaS営業はここからさらに上を目指せる分野と言えます。
SaaS市場の成長と求人動向
日本のSaaS市場は拡大を続けています。国内SaaS市場は2024年時点で1兆円規模を超えたと見られており、今後も年率10%以上の成長が見込まれています(総務省「令和6年版 情報通信白書」)。
市場が伸びれば、SaaS企業の採用ニーズも当然増えます。とくにインサイドセールスやカスタマーサクセスはここ数年で急速にポジション数が増えた職種で、「営業経験があれば未経験歓迎」という求人も少なくありません。
SaaS業界に限らず、IT業界の営業職全体で求人は増加傾向です。「SaaS一本に絞るのはちょっと不安」という人は、IT営業全体に選択肢を広げてみるのも手ですよ。
SaaS営業からのキャリアパス
SaaS営業で経験を積んだあと、キャリアにはいくつかの方向が開けます。
営業マネージャーやセールスディレクターとしてチームを率いる道。マーケティング職に転身してリード獲得の戦略を設計する道。事業企画や経営企画に移ってプロダクトの成長戦略に関わる道。SaaSスタートアップの創業メンバーとして独立する道もあります。
SaaS営業で身につくデータ分析力、顧客課題の構造化力、SalesforceやHubSpotといったCRMツールの運用経験は、営業以外の職種でも高く評価されます。「営業しかやってこなかった」と思っていても、SaaS営業の経験がキャリアの選択肢を広げてくれるんです。
SaaS業界のプロダクトマネージャーへの転職も、営業出身者が実は活躍しやすいポジションです。顧客の声を一番知っている営業だからこそ、プロダクトの方向性を決める仕事に向いています。
SaaS営業はきつい? やめとけ? 正直に答えます
きつい理由は3つある
正直に言うと、SaaS営業にはきつい面があります。ここを隠しても意味がないので、よく聞く声をそのまま書きますね。
ひとつ目は、成果が出るまでの時間が長いこと。SaaSは法人向けのサービスなので、商談開始から受注まで数か月かかることも珍しくありません。Yahoo!知恵袋には「1年半で契約0件」「完全に心が折れた」という投稿もあります。前職で「今月の売上」を追いかけるスタイルだった人ほど、この長いサイクルに戸惑います。
ふたつ目は、KPI管理が細かいこと。SaaS営業では架電数、商談設定率、商談化率、成約率、ARR(年間経常収益)など、プロセスごとに数字で管理されます。気合と根性で乗り切るタイプの営業スタイルとは相性が悪く、「数字で詰められる」と感じる人もいます。
みっつ目は、覚えることが多いこと。SaaSのプロダクト知識、業界特有の用語、CRMツールの使い方。さらに顧客の業界知識まで、短期間でインプットする量が多い。前職の営業知識だけでは通用しない場面が最初は続きます。
乗り越えた人が共通してやっていること
きつい面がある一方で、SaaS営業に転職して「やってよかった」と感じている人にはいくつかの共通点があります。
まず、最初の半年を「学習期間」と割り切っていること。SaaS営業は立ち上がりに時間がかかる職種です。3か月で成果が出なくても焦らず、プロダクト理解と顧客理解を地道に積み重ねた人が半年後から一気に数字を伸ばす傾向があります。
それから、数字を「管理されるもの」ではなく「自分の改善ツール」として使っていること。KPIが細かいからこそ、どこでつまずいているかが見えます。「商談化率が低いなら、ヒアリングの質を見直そう」と自分で分析して手を打てる人は、きついと感じる前に次のアクションに移れます。
そして、社内の先輩やマネージャーに早い段階で相談していること。SaaS企業はチームで動く文化が強いので、一人で抱え込む必要はありません。わからないことを素直に聞ける人のほうが、結果的に立ち上がりが早いです。
面接で聞かれたときのヒント
「SaaS営業のきつい面をどう考えていますか?」と聞かれたら、「成果が出るまで時間がかかることは理解しています。前職で半年がかりの大型案件を粘り強く追いかけた経験があるので、長い営業サイクルにも対応できます」のように、自分の経験と結びつけて答えると好印象です。
SaaS営業に向いている人の特徴
法人営業経験が活きる場面
「自分のスキルがSaaS営業で通用するのか」と不安を感じていませんか。法人営業の経験は、SaaS営業で直接活きます。
たとえば、顧客の組織構造を理解して決裁ルートを把握する力。これはフィールドセールスの商談で欠かせませんが、法人営業で日常的にやっていることですよね。顧客の課題を聞き出すヒアリング力も、有形商材か無形商材かに関係なく転用できます。
「有形商材しか売ったことがない」という人も安心してください。有形商材の営業は「モノの価値を伝える」仕事、SaaS営業は「課題解決の価値を伝える」仕事。伝える対象が変わるだけで、「顧客の話を聞いて、提案をまとめて、社内を巻き込んで受注する」という基本動作は同じです。
意外と向いている人の特徴
SaaS営業に向いているのは、ガツガツ売り込むタイプの営業パーソンではありません。むしろ以下のような人が活躍しています。
- 数字やデータを見るのが苦にならない人。SaaS営業はデータドリブンな仕事で、Excelやスプレッドシートを日常的に使います
- 顧客と長く付き合いたい人。1回売って終わりではなく、半年、1年と関係を続けることにやりがいを感じるなら、SaaS営業のスタイルに合っています
- 新しいツールや技術を覚えるのが好きな人。Salesforce、HubSpot、Slackなど、SaaS企業では社内でも多くのクラウドツールを使います
- チームで成果を出すことに抵抗がない人。SaaS営業はIS・FS・CSの連携が成果に直結するので、個人プレーよりチームワークを大事にできる人が伸びやすいです
3年間法人営業を続けてきたあなたには、SaaS営業で活かせる力がちゃんとあります。足りないのはSaaS業界の知識だけ。それは転職後に身につきます。
未経験からSaaS営業に転職できる?
未経験者が狙うべきポジション
営業経験があれば、SaaS業界が未経験でも転職できます。
狙い目はインサイドセールスです。理由は3つあります。まず、SaaS企業のインサイドセールスは採用数が多く、未経験歓迎の求人も豊富なこと。次に、電話やオンラインでのアプローチが中心なので対面営業の経験がそのまま活かせること。そして、インサイドセールスからフィールドセールスやカスタマーサクセスへのキャリアアップが社内異動で実現しやすいこと。
ただし、書類選考は甘くありません。Yahoo!知恵袋には「20社応募して書類通過4社」という体験談もあります。SaaS業界の知識を転職前にある程度つけておくだけで、書類の通過率は変わります。
転職前にやっておきたい準備
SaaS営業への転職を決める前に、今日から始められる準備があります。
SalesforceのTrailheadで無料学習
SaaS営業で最もよく使われるCRMツール「Salesforce」には、無料のオンライン学習プラットフォーム「Trailhead」があります。営業プロセスの基本モジュールを2〜3個完了するだけで、面接で「SaaSへの本気度」を示せます。
SaaS企業の求人を10社分析する
転職サイトでSaaS営業の求人を10社ピックアップして、共通して求められるスキルや経験を書き出してみてください。「法人営業経験2年以上」「数値目標の達成実績」など、自分が満たしている条件と足りない条件が見えてきます。
SaaSの基本用語を覚える
MRR(月間経常収益)、ARR(年間経常収益)、チャーンレート、LTV、CAC(顧客獲得コスト)、NRR(売上維持率)。面接で「SaaSのビジネスモデルを理解していますか?」と聞かれたとき、これらの用語をスラスラ説明できるだけで印象がまったく変わります。
志望動機の考え方
SaaS営業の志望動機で採用担当者が見ているのは、「なぜSaaSなのか」「なぜ営業なのか」「なぜこの会社なのか」の3点です。
「年収が高いから」「成長市場だから」だけだと弱い。たとえば「前職の法人営業では売ったあとの顧客フォローに携われなかったけど、SaaS営業なら契約後も顧客と長く関われる。自分の営業スタイルにはそちらのほうが合っている」のように、前職の経験と結びつけて語ると説得力が出ます。
「働き方を改善したい」という本音があっても、それだけを志望動機にするのは避けたほうがいいですね。SaaS企業によっては拘束時間が長いケースもあり、面接官は「うちに入ってギャップを感じないか」をしっかり見ています。
注意
「SaaS営業=リモートワークで楽に稼げる」というイメージで転職すると、入社後にギャップを感じやすいです。企業ごとに働き方は異なるので、面接で具体的な勤務体制を確認しましょう。
よくある質問
SaaS営業に資格は必要ですか?
必須の資格はありません。ITパスポートやSalesforceの認定資格があれば面接でアピール材料になりますが、なくても転職は十分に可能です。それよりも法人営業の実績や、SaaSビジネスモデルへの理解度のほうが評価されます。面接前にSalesforce Trailheadで基礎モジュールを完了しておくと、学ぶ意欲を示せます。
SaaS営業のキャリアパスはどうなりますか?
営業マネージャーへの昇格が最も一般的なルートですが、それだけではありません。マーケティング職への転身、事業企画や経営企画、プロダクトマネージャーなど、SaaS営業で培ったスキルは多方面に活かせます。SaaSスタートアップの立ち上げに参画する人もいます。営業経験しかないと感じていても、SaaS営業でつくスキルはキャリアの幅を広げてくれます。
まとめ
SaaS営業への転職について、仕事内容から年収、きつい面、未経験からの準備まで正直にお伝えしました。
押さえておきたいポイント
- SaaS営業はIS・FS・CSの3分業体制。未経験ならインサイドセールスから始めるのが現実的
- 年収はフィールドセールス経験5年以上で800万〜1,200万円も見えてくる
- きつい面はある。でも最初の半年を学習期間と割り切って、数字を自分の武器にできれば乗り越えられる
- 法人営業の経験はSaaS営業でそのまま活きる。足りないのは業界知識だけ
- 転職前の準備はSalesforce Trailheadの無料学習、求人分析、SaaS用語の習得から始めよう
今の営業スタイルにモヤモヤを感じているなら、SaaS営業は選択肢として十分にアリです。最初はうまくいかなくて当然。半年で成果が出なくても焦らなくて大丈夫ですよ。
まずはSaaS営業の求人をいくつか眺めてみるところから始めてみてください。あなたの法人営業の経験は、SaaS業界で思っている以上に評価されます。応援しています。