経理事務とは、会社の日常的なお金の流れを記録・管理する職種で、仕訳入力・請求処理・入出金管理・月次決算補助が主な業務です。事務職の中でも専門性が高く、経験を積むほど決算・管理会計・財務へキャリアを広げやすい点が特徴です。
「未経験でも入れるのか」「簿記3級で足りるのか」「30代でも遅くないのか」と迷っているなら、この記事を読んでほしいです。ただし現実も先に言っておくと、事務従事者の有効求人倍率は0.42倍(厚生労働省 令和6年4月分)で、一般事務より競争は高め。準備の仕方と求人の選び方を間違えると、経験があっても書類で落ちやすい職種です。
仕事内容、未経験からの準備手順、経理と経理事務の違い、簿記の考え方、志望動機の書き方、転職後の現実まで、2026年4月時点の公開情報をもとに整理します。あなたが「なんとなく興味がある」状態から「今の自分ならどこまで狙えるか」を判断できる状態まで持っていく構成です。
経理と経理事務の違い / 有効求人倍率0.42倍の競争実態 / 未経験から入りやすい求人の見分け方 / 簿記3級と2級の使い分け / 前職別の志望動機例文 / 転職に最適な時期 / 転職後の現実と後悔しない選び方
経理と経理事務はどう違うの?
求人票を見ていると「経理」と「経理事務」が混在していて、どちらに応募すべきか迷う人が多いです。これは実態として別のポジションを指していることが多く、混乱の原因になっています。
| 区分 | 経理事務 | 経理(主計・経理担当) |
|---|---|---|
| 雇用形態 | 一般職・派遣・パートが多い | 総合職・正社員が多い |
| 主な業務 | 仕訳入力・請求処理・入出金管理 | 決算業務・管理会計・税務・財務計画 |
| 必要なスキル | 簿記3級・Excel基礎・正確性 | 簿記2級以上・決算経験・英語力(大手) |
| 未経験での入りやすさ | 高い | 低い(経験者優遇) |
| AI淘汰リスク | 高め(定型業務が多い) | 低め(判断・経営参画が多い) |
未経験から転職するなら、まず「経理事務」のポジションを狙うのが現実的です。そこで月次決算補助まで担当できる経験を2〜3年積んでから、「経理担当」にステップアップするルートが多いです。簿記2級取得と決算経験が揃ったタイミングで、財務・会計へのキャリアアップも視野に入ってきます。
- 経理業務の経験ゼロ、または1年未満 → 経理事務(補佐)からスタート
- 経理事務の実務が3年以上あり決算補助まで経験済み → 「経理担当」にも挑戦可能
- 簿記2級取得済みで管理会計・財務に興味あり → 中小企業の経理担当やJACで経験者求人を探す
経理事務の転職市場の見方
事務従事者全体の有効求人倍率は0.42倍(厚生労働省 令和6年4月分)で、求職者1人に対して求人が0.42件しかない計算です。全職種平均が1倍前後であることを考えると、競争は厳しめです。「未経験OKの求人はある」のは本当ですが、1つの求人に複数の応募者が集まる状態は覚悟しておいてください。
dodaの「経理事務・財務アシスタント」求人傾向では、2026年1月15日時点で転勤なし勤務地限定が1,432件、第二新卒歓迎が1,379件、正社員が1,949件とされており、若手・未経験者の入口は残っています。年収帯では400万〜500万円が最多で、未経験スタートは300万円台後半が多い傾向です。
求人票に「経理事務」とあっても、実態は総務・庶務・労務がメインのケースがあります。面接で「月次決算補助の業務割合はどのくらいですか」と確認しておくと、入社後のギャップを防げます。将来も経理でキャリアを積みたいなら、この確認は必須です。
経理事務の仕事内容
厚生労働省の職業情報提供サイト job tag では、経理事務は入出金管理・伝票起票・帳簿記入・月次決算書類の作成・試算表や財務諸表の基礎資料作成・給与支払い・予算管理資料の作成まで担う職種と整理されています。単なる入力業務ではなく、会社のお金の流れを正確に見える化する仕事です。
| 業務サイクル | 主な仕事 | 未経験者が最初に触れやすい領域 |
|---|---|---|
| 日次 | 仕訳入力、入出金確認、請求書処理、経費精算 | 高い |
| 月次 | 売掛・買掛管理、残高照合、月次決算補助 | 中程度 |
| 年次 | 決算補助、監査対応補助、税務申告資料の準備 | 経験後に拡張しやすい |
一般事務との一番の違いは、正確さが成果に直結することです。1円のズレでも原因を追う必要があります。数字を扱うこと自体より、締切までに整合性を合わせる粘り強さのほうが実際の現場では求められています。
向いている経験と適性
経理事務に向いているのは、数学が得意な人だけではないです。ルールに沿って処理を進めるのが苦ではない人、数字のズレに気づける人、関係部署と丁寧に確認できる人が強いです。前職でどんな数字業務を担当してきたかが、採用側にとって一番の判断材料になります。
活かしやすい前職経験(経理文脈への言い換え)
| 前職経験 | 経理文脈への言い換え |
|---|---|
| 営業事務 | 売掛管理・請求書処理・受発注の流れを理解している |
| 一般事務 | Excel管理・定型業務の正確な処理・社内調整に慣れている |
| 販売・サービス | 現金管理・締め処理・店舗数字の確認経験がある |
| 総務・労務 | 給与・社会保険の周辺知識があり、バックオフィス連携に強い |
「事務をしていました」では弱く、「請求データを月300件処理し、締切遅延ゼロで運用した」のように数字と正確性で語ることが書類通過のカギです。あなたが積んできた数字経験は、経理の世界ではちゃんと武器になるので、しっかり言語化してみてください。
- 締切から逆算して作業順序を組める
- 違和感のある数字を放置しない
- Excel関数や表整理に抵抗がない
- 確認や報連相を面倒がらない
未経験からの準備手順
job tagでも、経理事務は入職時に必須資格ではない一方、日商簿記検定が役立つとされています。未経験から狙うなら、資格を取ること自体より「経理の基礎を理解している」と採用側に伝わる状態を作ることが大切です。
経理事務への転職準備チェックリスト
応募前にこれだけ揃えておくと、書類通過率が変わります。
1. 簿記3級で基礎を固める
仕訳・勘定科目・試算表の考え方を説明できる状態を目指してください。日商簿記3級は第170回統一試験で合格率42.4%、直近の第171回でも34.5%で、独学でも十分狙えます。未経験応募では「勉強を始めている」より「3級を取って基礎を示せる」ほうが書類通過率が変わります。
2. Excelと会計ソフトの基礎を触る
SUM・IF・VLOOKUP・ピボットテーブルまでは最低限触っておきたいです。会計ソフトはfreeeやマネーフォワード クラウド会計の無料情報を見ながら、仕訳入力の流れを把握しておくと面接で話しやすくなります。
3. 数字を扱った実務経験を棚卸しする
売上集計・請求処理・入金確認・在庫差異チェック・レジ締め・経費精算など、前職で触れた数字業務を洗い出してください。未経験転職で見られるのは「完全未経験かどうか」より「経理に近い仕事をどう再現できるか」です。
4. 入口求人を選びすぎない
最初から年収や業務範囲の理想を詰め込みすぎると、未経験では母数が減ります。最初の一社は「月次補助まで触れられるか」「教育があるか」「残業が極端でないか」を優先したほうが、その後の伸びしろを作りやすいです。
転職活動の最適な時期
経理事務の転職では、時期の選び方が採用率に影響します。決算期の繁忙期を終えたタイミングで企業が採用を活発にするため、特定の時期に動くほうが求人の数と質が上がりやすいです。
| 時期 | 求人の状況 | 理由 |
|---|---|---|
| 1〜2月 | 求人が増えやすい | 3月決算期前の採用強化。年度末補充需要 |
| 3〜4月 | 競争が上がりやすい | 新卒入社・異動シーズンで求人も多いが応募も多い |
| 6〜7月 | 求人が増えやすい | 上半期決算後の採用強化。ボーナス支給後の転職者増加 |
| 9〜10月 | 比較的安定 | 下半期の採用計画が動き始める時期 |
活動開始は希望の入社時期から逆算して2〜3ヶ月前がめやすです。1月入社を目指すなら10〜11月に求人探しを始め、6月末の内定を目指すなら3〜4月からエージェントに登録しておく動き方が合います。
3月下旬〜4月上旬(決算業務の最繁忙期)は、採用担当者自身も忙しく、選考が遅くなりやすいです。でも求人が出ているなら応募して問題なし。選考のスケジュールが長めになることを想定しておくだけで十分です。
年収相場と資格の考え方
経理事務の年収は、資格単体より、どこまで業務範囲を持てるかで変わります。dodaの求人傾向では400万〜500万円帯が最多ですが、未経験スタートでは300万〜400万円帯が現実的です。入社後に月次・年次・管理会計へ広げるほど年収は上がりやすくなります。
| キャリア段階 | 想定年収の目安 | 評価されやすい要素 |
|---|---|---|
| 未経験〜初年度 | 300万〜400万円 | 簿記3級、Excel基礎、請求や入金確認の経験 |
| 実務2〜3年 | 380万〜500万円 | 月次補助、会計ソフト運用、残高照合の自走 |
| 実務4〜6年 | 450万〜600万円 | 決算補助、税務補助、業務改善、後輩指導 |
| 主担当〜リーダー | 600万円以上 | 年次決算、管理会計、予算管理、マネジメント |
資格の目安として、未経験なら簿記3級が入口、年収アップや選択肢拡大なら簿記2級が効きやすいです。MS-Japanが公開した転職決定者データでは、30代の平均オファー年収は簿記3級が453万円、簿記2級が469万円、40代では482万円と561万円で差が広がっています。資格だけで決まるわけではないですが、2級は中長期で効きやすいと考えておいていいです。
- 未経験応募の入口づくり: まず簿記3級
- 書類通過率と将来の年収を上げたい: 2級まで視野に入れる
- 資格だけで戦わない: 実務に近い数字経験も必ずセットで示す
年代別の転職難易度
「30代・40代でも未経験で経理に転職できますか?」という質問は多いです。結論から言うと、年齢より経験の言語化と志望動機の明確さのほうが採用には影響します。ただし年代ごとに狙うべき求人と見せ方が変わります。
20代(未経験)
入口求人が最も多い年代です。第二新卒歓迎の求人が1,379件(doda)あり、簿記3級と数字業務経験があれば書類通過は十分狙えます。学習意欲と成長可能性をアピールする戦略が有効です。
30代(未経験〜経験浅)
30代でも未経験での転職は可能ですが、「なぜ今経理なのか」の明確な理由が必要です。営業事務・一般事務・販売などで積んだ数字業務経験を具体的に示せると、30代前半なら十分戦えます。簿記3級取得済み、かつExcel関数を実業務で使っていた経験があれば書類通過率が上がります。
35〜40代(未経験または経験浅)
入口求人の数は20代より少なくなりますが、中小企業での経理1人担当ポジションや、バックオフィス統括型の求人では35歳以上でも採用されるケースがあります。この年代では「なぜ未経験でも採用するメリットがあるか」を意識した自己PRが大切です。建設業経理士など業界特化の資格があると差別化できます。
中小企業では、経理担当が社長や創業者の家族であることがあります。外部採用をしているとしても、関係性が密な職場では人物重視の採用基準になりやすいです。このタイプの求人はエージェント経由で実態を確認してから応募するほうが安全です。
書類と面接の伝え方・志望動機例文
未経験からの経理転職で落ちやすいのは、経験が足りないからではなく、前職の経験を経理文脈に言い換えられていないからです。「事務をしていました」では弱く、「請求データを月300件処理し、締切遅延ゼロで運用した」のように数字と正確性で語る必要があります。
職務経歴書で伝えること
- どんな数字を扱っていたか(件数・金額・頻度)
- ミス防止や締切管理で工夫したこと
- Excelやシステムを使って改善したこと
- なぜ経理へ寄せたいのか(前職経験との接続)
書類の整え方は、履歴書の書き方や職務経歴書の書き方も一緒に見ておくと整理しやすいです。
志望動機例文(前職別パターン)
例文1: 営業事務からの転職
「現職では月200件以上の請求書発行・売掛確認を担当してきました。数字を正確に処理する仕事のやりがいを感じる中で、月次決算や財務的な視点も持った仕事をしたいと考えるようになりました。簿記3級の取得を機に、会社の財務の土台を支える経理事務にキャリアをシフトしたいと思い応募しました。」
例文2: 一般事務(Excel中心)からの転職
「現職では社内の経費精算システムの管理と、月次の部門別コスト集計をExcelで担当しています。数字を扱う作業が一番やりがいを感じる仕事で、より専門的に会社のお金の流れに関わりたいと考えました。簿記3級を取得し、経理の基礎知識を固めたうえで、月次決算補助まで担当できる環境で実務を積みたいと思っています。」
面接で聞かれやすいこと
- なぜ一般事務ではなく経理を目指すのか
- 数字のミスを防ぐためにどんな工夫をしてきたか
- 簿記学習をどう仕事に結びつけるか
- 繁忙期の残業や締切対応にどう向き合うか
面接対策はよくある面接質問も参考になります。経理では、抽象的なやる気より「確認を徹底した結果、ミスを防げた」タイプのエピソードが刺さりやすいです。
転職後の現実と後悔しない選び方
経理事務に転職してから「こんなはずじゃなかった」と感じた人の声を正直に整理します。知恵袋やエージェントのヒアリング情報から拾えるリアルな後悔ポイントを先に知っておくと、求人選びのチェックポイントが変わります。
よくある転職後の後悔
- 「仕訳入力が思ったより単調だった」→ 面接で1日の業務比率を確認する
- 「繁忙期(決算期)の残業が月80時間を超えた」→ 3月と9月の残業時間実績を確認する
- 「評価されにくい。成果が見えない仕事だった」→ 業務改善や会計ソフト導入など裁量の有無を確認する
- 「実態は総務・庶務が8割で経理は2割だった」→ 業務割合と月次決算補助の有無を面接で確認する
- 「経理1人担当でミスが直接経営に響くプレッシャーが高かった」→ 経理担当の人数と引継ぎ期間を確認する
「後悔しない選び方」は、求人票の表面だけでなく面接で実態を確認することに尽きます。月次決算補助の業務割合・繁忙期残業の実績・経理担当者の人数・会計ソフトの種類、この4点を面接で必ず聞くようにしてください。
また、経理担当が1人の中小企業は実務を幅広く担える反面、引継ぎが薄くなりやすいです。初めての経理転職なら、教育体制がある程度整っている企業(経理担当が2人以上いる規模)を選ぶほうが最初の1社として安全です。
相談先の選び方
経理事務は求人票だけだと業務範囲が読みにくく、未経験なら特に、実際の担当領域を把握しているエージェントを使ったほうが効率的です。最初の一社でどこまで触れるかが、その後の年収にかなり効きます。一歩ずつ確実に進んでいけば、道は必ず開けます。
経理事務への転職で相談しやすいサービス
求人数を広く見たい人、サポートを厚く受けたい人、管理部門特化で探したい人で使い分けやすい3社です。
求人数の母数を広く見たい人向けです。未経験可から経験者向けまで比較しやすく、最初の一社を探す段階で使いやすい総合型です。
- 未経験可求人の母数を確保しやすい
- 書類添削と面接対策を進めやすい
- 職種未確定でも比較相談しやすい
サポートの丁寧さを重視したい人向けです。バックオフィス職の相談もしやすく、志望理由やキャリア整理を詰めたいときに使いやすいです。
- 転職理由の整理を進めやすい
- 初めての転職でも相談しやすい
- 中堅企業のバックオフィス求人も見やすい
すでに経理や管理部門の経験があり、次の転職で年収レンジを上げたい人向けです。経理・財務・管理会計の専門求人に強く、2社目以降の選択肢として使いやすいです。
- 経理・管理部門特化の求人に強い
- ミドル層の年収交渉に向いている
- 簿記2級以上の経験者に有効
よくある質問
簿記3級だけで本当に受かりますか?
必須ではありませんが、未経験なら取得しておくことをお勧めします。job tagでも関連資格として日商簿記が挙げられており、基礎知識の証明として機能します。求人票に「資格不問」とあっても、比較されるときに3級ありの候補者が有利になりやすいです。2級まで取得できると書類通過率と年収の両方で差が出やすくなります。
30代・40代からでも未経験で経理事務に転職できますか?
30代なら十分可能です。特に30代前半で、営業事務・一般事務・販売など数字に近い前職経験があれば、簿記3級と組み合わせることで書類通過は狙えます。40代は入口求人の数は減りますが、中小企業のバックオフィス統括ポジションなど、管理スキルを活かせる求人で採用されるケースがあります。年齢より「なぜ経理を選ぶのか」の明確さが採用側の判断に効きます。
経理事務への転職活動を始める最適な時期はいつですか?
1〜2月と6〜7月が求人が増えやすい時期です。3月決算の会社が多い日本では、決算直前の1〜2月に人員補強の採用が活発になります。ボーナス支給後の転職者が増える6〜7月も同様です。入社希望時期から逆算して2〜3ヶ月前に活動を始めるのが目安です。
最初から高年収を狙えますか?
完全未経験で最初から高年収は現実的ではありません。1社目で月次補助まで触れ、2級取得や決算補助の経験を積めば、2社目で500万円前後を狙いやすくなります。最初の転職は伸びる土台づくりと考えるほうが現実的です。
経理事務に向いている人はどんな人ですか?
数学が得意である必要はありません。ルールに沿って定型作業を正確に続けられる人、数字のズレに気づいてすぐ原因を探せる人、締切から逆算して作業を組める人が向いています。成果が見えにくい仕事でも、整合性が合ったときの達成感を感じられる人は長く続きやすいです。
まとめ
- 「経理事務」と「経理担当」は別ポジション。未経験はまず経理事務(補佐)から
- 有効求人倍率0.42倍と競争は厳しめ。準備と求人選びの精度が大切
- 簿記3級は入口づくりとして有効で、2級は将来の年収差につながりやすい
- 転職に適した時期は1〜2月と6〜7月。入社希望の2〜3ヶ月前に動き始める
- 志望動機は前職の数字業務経験と経理を結びつけて具体的に書く
- 転職後の後悔を防ぐには、面接で業務割合・繁忙期残業・担当人数を確認する
- 書類と面接では、正確性・締切管理・数字経験を具体的に語る
経理事務への転職は、資格だけで決まる仕事ではないです。大事なのは、あなたがこれまで扱ってきた数字や確認作業、締切管理の経験を、経理の仕事にどうつなげるかです。そこが言語化できれば、未経験でも十分に入口は作れます。一歩ずつ積み上げていきましょう。